幻の青黒檀で造られた江戸八角箸
©️写真AC
箸にこだわりを持っている人はまだ多くないのではないでしょうか。
睡眠は人生の3分の1を占めるというのは、よく言われる事で寝具にこだわる人は年々増えています。
モノ選びの基本として、それを使う頻度や年数を考慮して総合的に満足度か高ければある程度お金を掛けてもいいと思っています。
寝具、PCやキーボード、デスクと椅子、スマホなど、これらが1日のうちでも使う時間が長いというのはよく言われます。
ここで、いままで目を向けていなかったけど、箸も長い方じゃないか?と考えました。
食事は人間の3大欲求の一つで、生活に欠かすことはできません。また、一日3回ほど摂り、時間にしても長い方ではないでしょうか。
他のカトラリーも使いますし、外食の時もあるので、全ての食事で使わないとしても、やっぱり箸で食べることが多いし、日本人として愛着があります。
箸に一度目を向けてみても良いかなと思い、せっかくなのでこだわって探すことにしまいた。
思い返せば、箸を自分できちんと選んだことが過去にありません。デパートや商業施設に入っている食器店などで並んでいる中から選ぶ程度でした。
それに、頻繁に買い換えるものでもなく、今までのものに特に不満もありません。
それでも自分の毎日使うものなので、少し掘り下げて調べてみました。
箸を選ぶ要素
まず、長さは一般的に一咫(ひとあた。手を広げた時の親指と中指の長さ)の1.5倍がおすすめのサイズで、自分は一咫の1.5倍だと22.5cm程度。
そのくらいは心得があったので、今まで使っていた箸もそのくらいの長さです。
それに加えて、角の数、丸、バランス、柄、素材、仕上げと探し始めると多くの要素がありました。
加えて、七角は割り切れないため、美しい七角形は職人による手作業でないと作れないといいます。そういうのも心惹かれました。
仕上げの塗装も伝統的なものかた現代的なコーティングも多岐にわたります。
さらには、太さや重量バランスなど、その人が手に馴染むと思う直感的な要素もあります。
素材も大きな要素です。黒檀などよく知られている高級な木材から、聞き馴染みのない希少な木材まで多くの種類があります。
幻の青黒檀で造られた江戸八角箸
最終的にはこちら、漆芸中島で作られている江戸八角箸を選びました。
→店舗紹介ページ【漆芸中島】
2015年頃に本で紹介されていて初めて知り、ずっと気になっていました。
お箸に2万円というのはかなり高額なので、なかなか踏ん切りがつかず、いつか欲しいものリストに追加したままに。
気になっていた青黒檀という木材は希少素材で、現在輸入することができず、国内に既にあるものに限られています。
つまり、年々素材が減っていく一方ということです。
いつかは無くなってしまうことが決まっているわけで、後になって後悔しても遅いと。毎日の食事が美味しく、楽しくなればむしろ安いじゃないかと自分を言い聞かせ、一回伺って現物を見てみることにしました。
そして佃にある漆芸中島に伺いました。
漆芸中島の箸
漆芸中島の箸は木の中心付近を木材にした正目(柾目)と言われる板しか使わないとのこと。
柾目の木材はより内部が緻密で反りが少ないという特徴があります。
その反面、中心付近ということはあまり量が採れず、当然高価になります。
また、漆芸中島の箸はメンテナンスが無料で受けてもらえるのもポイントです。
永く使えるようにというポリシーが垣間見えます。
漆の塗り直しだけでなく、その時の箸の状態によっては箸先を削り、歪みや欠けを直すところまでしてもらえます。
木材の違う何種類かの箸を持たせてもらいました。
どれも今までの箸と比べると、滑らかでそれに加えて箸の密度が高い感覚がありました。
正直、縞黒檀の箸も素晴らしかったです。
でも、青黒檀の持つ雰囲気がどうしても気になって、青黒檀のものに決めました。
長さは23cmのものと24cmのもので迷っていました。
(2021/01/28現在では同価格のものだと22.5cmと23.5cmとなっています。寸法を変えたのか、表示の都合上変更したのかはわかりません)
話のなかで何年か前から気になっていたことを伝えると、それなら数千円の違いなら長い方がお勧めとのこと。
いずれメンテナンスして削る場合にもともと長い方がより長く使えるというメリットがあるからです。
最終的に1番長い24cmのものにしました。
手元はしっかりしてるのに箸先が細い。
実際食べてみると細かいものはもちろん、こんにゃくなど掴みづらいものもつまめます。
それに口に運んだ時も心地よく口から抜けるので、箸の存在感が薄く、料理がワンランク上がった感じがします。
触り心地も心地よく、しっとりと手に馴染む感覚があります。
青黒檀がなぜ高価なのか。
そもそも希少性が高いものは高価です。
そして青黒檀などの希少素材の多くは成長が遅く(というかゆっくり成長する)、キズになりやすいということです。
キズというのは虫による影響だったり成長中の環境といった要因によって生じる亀裂などです。
まずすぐわかる亀裂などがあれば木材として販売できません。さらに、木材として仕入れても製造してからじゃないとわからない内部のキズなどもあり、途中で商品にできない木材とわかるといったケースもあります。歩留りが低くさらに高価になる理由です。
一般的に箸に使われている木材は成長が早く、そう言った影響を受ける前に木材になるため、歩留りが高く、安価にできる。ということです。
実際、中島さんの工房では、キズ扱いの箸が束になっていました。
商品として並ぶ箸以上に、それだけの箸が職人の手作業で作られているのであれば完成に至った箸が高価になるのも当然だなと思います。
青黒檀の江戸八角箸の扱い方とメンテナンス
購入時の注意書き通り、スポンジ・洗剤は使わず指先を使う。ぬるま湯で箸先を洗って布で拭く。乾燥機は使わない。というのが基本です。
加えて、たまに食用油を使って磨きます。
箸のために結構手間が掛かるというのが率直な感想なのではないでしょうか。
自分はそういう一手間が楽しめるタイプで、その方が愛着が湧きます。
ただ先日、誤ってこの箸を食洗機にかけてしまいました、、
(普段は自分で片付けるけれど、少し席を外した時に家族が善意で下げてくれ、普段は専ら乾燥用になっている食洗機をたまには使おうという複数のたまたまが重なって起きてしまった惨事、、)
洗剤に加えて温風による乾燥までしてしまったので、箸はカサカサの状態に。
ひと目で「やってしまった」というのがわかるほど違っていました。
不注意で申し訳なかったのですが、メールにて相談し、メンテナンスをお願いしました。
直接伺いたかったが、コロナ禍ということもあり、郵送対応にてメンテナンスをしていただきました。
箸は数日後には漆を塗り直し、購入時のような状態になって戻って来ました。
また届いた際の状態を見て、お電話までいただき、扱い方のアドバイスまでしていただきました。
もっと良く使ってもらいたいという職人の気質というか、心意気を感じ、恐縮しました。
たしかに購入時に話を伺っていたし、説明書きも同封されてたので理解していたつもりでしたが、希少木材の高価な箸ということで、過度に丁寧に扱っていました。
本来、もっと「磨く」必要があったようで、自分の扱い方では磨くというより「拭う」といった感じだったのではと思い返しました、、
ある程度力を入れて光沢がでるように擦る方が良いようです。
この辺りはニュアンスなので、また伺ったら聞いてみたいです。
手仕事の工芸品の箸を購入して
購入後のメンテナンスなども、量産されたものではなかなかできないものです。
人とのコミュニケーションがあることで、また一段と豊かな気持ちになりました。
それに、職人の技術と日本の漆の文化など、非常に満足のいく箸で、値段に見合う、また使い込んでいくうちにそれ以上の価値が感じられる箸になっていくと思います。
興味を持たれた方の参考になれば幸いです。
参考HP→漆芸中島
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